#3 POLS JACQUARD ; YOSHINORI UEDA
POLSの色柄を大胆に表現するジャカード織は、
古くは、ゴブラン織や、西陣織に使われてきた織り方です。
当時は大変手間がかかり、高価なものでしたが、POLSのジャカード織は、
これをコンピュータで操り、昔では考えられないほど複雑な表現を織りだすことが出来ます。
それによって、今まで無かったような織り技術の表現を実現し、カタチにします。
ジャカード職人の上田善則 / Ueda Yoshinori は、テキスタイルデザイナーの梶原氏と取り組んでおよそ10年。
デザイナー梶原氏のイメージを具現化するパートナーとして、プロジェクトにかかわっています。
洋服作りで言うなら、 ” デザイナー “ と ” パタンナー ” の関係でしょうか?
生地作りも、洋服作りも、相手のテイストを理解し、解釈して昇華することが大事ではないでしょうか?
上田にPOLSについて、ジャカード織についての想いをききました。
ジャカード織との出会い
新卒で、入社した当時、今とは全然違う環境で日々仕事をしていました。
西脇で織物について勉強しましたが、デザインや物作りには ほど遠い環境で、
本当は、この時期、会社を辞めようと思っていたこともあります。
2年7か月くらいたった時、ジャカードでいろいろと会社的に取り組みをすることが決まって、
コンピュータのソフトを入れて、ジャカード工場と組むという話がありました。
その時、社長より、「デザインが価値を生む、物創りをやってみないか?」と、言っていただきました。
「ファッションが好きで、物創りが好きで、自分が創りたい柄をファッションの世界にだしてみたい。」
と面接のときにお話しした事を覚えていただいていたみたいです。
ジャカード工場「遠孫織布」の遠藤由貴さん
いざ始めてみたものの、右も左も、ろくにデータも作れない、
間違いだらけの僕のデータを作っていました。
それでも、毎回、何も言わずに織っていただき、
違う部分を「こうしたら織れるじゃないか?」とか、
一緒に考えて、根気よく付き合ってもらいました。
デザインを考えて、組織を組み立ててみて、 (※組織とは、 糸の構成、設計図のようなもの)
実際に織機で上がった生地を目で見て、感じて。
プロセスを親身になって接して下さった事があるから、
今、複雑な織物でも、信頼を持って織っていただけると思います。
僕が、イメージしたものを、表現しても、必ずカタチにできて、、
ジャカード表現ではだれにも負けないと、胸を張って言えるのも、
遠藤さんと共にいろいろと試行錯誤して取り組んできたからこそ今があると思います。
ジャパンテキスタイルコンクールへのエントリー
播州織は、シャツ地のフラットなイメージでした。
ジャカード織も、平面的な織物が多くて、もっとクリエイティブな表現ができると思っていました。
知覚的に、表現的に、革新的な新しいジャカード織を発信したい。
コレクションブランドのデザイナーから選ばれる織物を作りたい。
ジャカード織で表現できないものは無い事を証明したい。
どうしたら面白い表現、今までにないジャカード表現が出来るか?
そんなことを考えて、コンクールに出していました。
おかげ様で、6年間連続で、何かしら賞をもらうことが出来、自信がついたと思います。
梶原加奈子氏との出会い
ジャカード織についてある程度、知識もついてきた頃、梶原さんと出会い。
デザイン、表現、素材の使い方、テキスタイルデザインとは何か。
実際に 取り組みをする中で、たたき込まれました。
創ることの楽しさ、表現の面白さ、テキスタイルデザインの重要性、
今の僕の物作りの考えの元を教えてくれ、気づかせてくれた存在です。
頼れるお姉ちゃんみたいな存在ですね。
コレクションブランドMさんとの出会い
Mさん(生地のお客様、有名なので伏せます。スイマセン)は、いろいろと教えて下さいました。
人生、ファッション、物作りの師匠といえる存在で兄貴ともいえる存在で、
ファッションについて徹底的に教えていただき、ファッション、素材の創りかた、提案の仕方、など。
ファッションを強く勉強しなさいと言って下さり、ファッションとテキスタイルの融合について、
クリエーションの土台を作っていただいたデザイナーです。
他にも、世界で活躍するクリエイターにかかわれることで、
西脇の物創りが、世界でも通用すると実感でき、
ファッションについての考えや、デザイナーが何を思い、表現しているか、を学べ、
今のクリエイティブなテキスタイルを生み出すに刺激を受ける存在です。
特にI君は、僕の家の近所でたまにこっちに来た時に飲んでいたのが不思議なくらいBIGになってしまい、
いつどう変わるかわからないなあとものすごく感じられる存在。
人生何が起こるかわからない。
ジャカード作りの難しさ、面白さ
ジャカードの難しさは 斜めに織れないことぐらいで、
表現で、「必ず出来る」と思って、いつもいるので、
常に頭の中は、組織構造を考えて、ひらめきが生まれます。
なんでも思っている事が表現できる面白さ、
他にはない、組織を考えるプロセスが楽しい。
苦労と努力を積み重ねた分、できあがったときの達成感が、面白さ、かもしれないです。
自身のこれから
多くのデザイナーとの物作りをしたい。
デザイナーの服作り、ファッションをもっとクリエイティブに出来る素材を創り続ける
死ぬまで。誰にも負けない、唯一無二のテキスタイルマニアでありたいです。
2019年10月 上田善則 / 編集:丸山洵平